純粋で可愛い魔女(CP無し、親子のような…)
いきなり黒い袋を手渡されてこれに着替えるようにとお願いされた少女が一人。
黒い布で作られている袋は口を紐で閉じられていて、それを開けないことには中身が何なのかは分からない。
ただ「着替えるように」という内容から、身につけるものが入っているのだろうことだけは理解した。
そして、一体どういうわけなんだと尋ねようとしたときには、その袋を自分に手渡した人物は目の前から消えていて、ぽつんと一人居間に取り残されてしまっていた。
だが、閉められた襖の向こうからはきちんと人の気配が感じられる。
ということは、着替えを覗かないために出て行ってくれたのだろう。
素敵な気遣いだと喜べばいいのか、それとも、余計なおせっかいだと呆れるべきなのか…。
ひとまず、自分に有無を言わせないうちに着替えの場が整えられてしまったようだ。
こうなっては仕方が無い。
ふぅ…と諦めに似たため息を付き、恐る恐るその袋を縛っている紐を引っ張った。
開けて中身を覗いたところ、その中も何やら黒い布が入っているようだ。
これは引っ張り出してしまわないと、何なのか想像も付かない。
少しの沈黙の後、決心をしてえいっと引っ張り出す。
そして、その黒い布を広げてみてようやくそれが何なのか理解した。
だが、どうしてこれを私に着替えるようにと言ったのか、彼女の意図が掴めない。
とりあえず、それを問うためにも早く着替えることにした。
「き、着替え終わったぞ!」
閉められた襖の向こうへと、そう声を掛けると、すーっと襖が開く。
そして、黒い袋を自分に手渡した張本人が驚いたように、かつ嬉しそうに感嘆の声を上げた。
「アリア様!やはりお似合いでいらっしゃいますね!!」
嬉々とした表情で自分に近寄ってきて、うんうんと一人感心しているのはフィーア。
そして、訳が分からないといった表情でその場に立ったままのアリアがいた。
黒い三角帽を被り、黒いマントを羽織り、これではまるで魔女ではないか、といった格好になっていた。
自分がどうしてこういうことになっているのか、何故目の前の彼女がこうも嬉しそうなのか、さっぱり分からなかった。
「フィーアよ、これは一体どういうことだ?」
「あら?アリア様はご存知ありませんでしたか?今日はハロウィンなんですよ?」
ハロウィン…。
何やらフィーアがいうには今日と関わりのある行事のことらしい。
だが、ロゴスで聖女と謳われるより前から行事やお祭りといったものとはかけ離れた生活をしてきたせいか、どこかで聞いた事はある気もするが一体何をすべき日なのだろう。
むむ、と悩んだ顔をしていると、フィーアが優しく教えてくれた。
そして、その日の夜、珠紀の家を初めとして、守護者達の家の扉を誰かが叩くのである。
扉を開けるとそこには可愛い小さな魔女が一人。黒い三角帽の下から、ふわふわとした金髪をなびかせ、笑顔でこう叫ぶ。
「Trick
or treat!」
完 初出:2007.10.27
あとがき
ハロウィン!
アリアは本当は既に知識があるかもしれないですが、フィーアに教えられて初めて知り嬉々として皆の家にお菓子を奪いに行ったら可愛いなと思いまして…。
某コラムでのあまりの可愛さに胸を打たれて勢いのままで書きました!自分は満足です(ぐっ)
珠紀や守護者の皆はこの子にどういった反応をするのかな…。皆の家にお菓子がありますよーに(笑)
それでは読んでくださった方、ありがとうございました。