ふいに生まれる幸せ(真弘×珠紀)

毎日決まった時間に起きて、大体同じ時間に布団に入る。
まるでテンプレートのような学生生活の日々。
それでもいつも同じで飽きることなんて少しもなくて……。
だって、貴方が私にいろんな気持ちをくれるから。



毎日一緒に登下校をするようになってからまだ数日しか経っていない。
朝、神社に続く階段の下で待ち合わせて、挨拶を交わして、何気ない話をしながら学校へと向かう。
たまに途中で、拓磨や祐一先輩、慎司君の姿を見つけて、合流して皆で騒ぎながらの登校。
それから、午前中の授業を受けて、昼休みにはまた皆で昼食を食べて大騒ぎ。
そして、満腹感と部屋の暖かさから生まれる睡魔と闘いながら午後の授業を受けて迎える放課後。
勉強道具をカバンに詰め込んで、清乃ちゃんやクラスメイトに「また明日」と手を振って挨拶してから、教室を出てげた箱へと急ぎ足で。
校門か天気によってはげた箱で待ってくれている先輩の姿を遠くから見付けてほっとする。
駆け寄って行って待たせたことに対して軽く頭を下げたら、そんな自分に対して微笑んでくれるか、待たせすぎたら軽く怒っちゃう先輩。
そんな先輩とそのまま話を続けながら、帰路へと歩を進める。


そして、今日もそういった一日を終えて先輩と並んで一緒に帰っている。
ただ日直の仕事があるから遅くなるというのを言い忘れていて、待たせ過ぎちゃったから怒らせてしまったけれど……。
待ちくたびれたと言いながらわざわざ教室まで迎えに来てくれた真弘先輩の行動がとても嬉しくてたまらなかった。
怒られているのに自分がへらへら笑っていたら、火に油を注ぐようでどうしても緩んでしまう口元を必死に押さえた。
それが、今日一番嬉しかった出来事というのは自分だけの秘密。

「ところでよー、お前日直っていつもああいうことしてんの?」
「ああいうことって何ですか?」
おもむろに口を開いた彼の質問の意図が分からず、質問に疑問口調で返す。
「だーから、放課後に窓の戸締り確認とか、黒板ぴっかぴかにしたりとか、大幅にズレてる机の位置を直してやったりとかだよ!」
「それから、花瓶の水換えもですね!」
そう、笑顔で付け加えると、驚きとともにものすごく嫌そうな表情を向けてくる。
(うげ……、そんなことまでしてんのかよ)という彼の心の声が口に出さずともばっちり理解できるくらいだ。

日直として割り当てられている仕事以上のことをしてしまっているであろうことは自分でも分かっている。
ただ自分の性格からか、どうも「日直」になってしまった一日はきっちりしてしまわないと気がすまないわけで。
そして、そういう風にいろいろとしてしまっている自分の姿を教室まで迎えに来た後、しばし待っている間に見ていたらしい。
それにしても、どうしてそこまで驚くことなのか。
「真弘先輩のクラスは日直ってないんですか?」
「いや、日直はあるけどよ……」
「だったら、そういうときにいろいろとしたくなりません?」
「確かに俺も日誌書いたり、黒板消したりはするけどな。
けどそれも仕方なくってくらいだし、たまに自分が日直だってことさえ忘れてたりするしな!」
そう言って、あははと明るく笑う彼を見て、確かに忘れてそうだなと妙に納得してしまって自分もつられてくすくすと笑う。
ひとしきり笑った後で、彼がぽそりと呟く。

「……でもよ、まぁ、偉いんじゃないの?」

話の流れで何気なく出た言葉。
それから、すぐに今日の夕飯は何だとか、今夜は面白いテレビ番組があるとか、でも、そういや珠紀ん家にはテレビなかったよなーとか、次々と話が続いていった。
けれど、自分の頭の中では先程の言葉が何度も繰り返されているわけで。
自分を褒めてもらったこと以上に、自分の性格を認めてもらえたようで、また幸せな気持ちになる。

それから、数日間その言葉を思い出しては思い出し笑いをしてしまって、周りから不審に思われる珠紀の姿があった。


完 初出:2008.01.20


あとがき

日常生活の中でのふとした幸せ、そこから生まれるドキドキ感といったことが大好きでたまらないようです。
気付けばそういう内容の話ばかり書いているようでアレですが、これからも書いてしまうと思います…(苦笑)
ワンパターンかもしれませんが、珠紀の幸せな気持ちが貴方にも伝染していたらいいな、と。

それでは読んでくださった方、ありがとうございました。