恐怖の電話(真弘×珠紀)

「あのよ……、お前。恐怖の電話って知ってっか?」



真弘先輩と電話で話をしているときに、いきなりそんな話題を振ってきた。
いつものように何かはしゃいで冗談を言うときのような嬉々とした言い方ではなく、どこか真剣な口調にこちらもつい身構えてしまう。

「何ですか?恐怖の電話って?」

何となく「恐怖」という言葉から怖い話なんだろうなと感じられて、恐る恐る尋ねる。

「実はよ…、俺も最近他の奴から聞いた話なんだけど……。
もしかしたら、俺、恐怖の電話現象の一歩手前まできててヤバイらしいんだよ」

何か恐ろしい目にでもあったのか、ごくりと喉を鳴らす。
実際にタタリガミに襲われたり、ロゴスと生死を賭けての戦いを繰り広げたりした自分としては、少しはそういったものに対する恐怖に耐性が出来ているかもしれないとはいえ、やはり怖いものは怖い。
自分のいる周りの空気が少しひんやりとしてきたようにまで思えてくる。
そんな風にぞくぞくとしたものを感じながら、真弘の言葉を待ってみる。

「最近さ……、頻繁に電話が掛かってくるんだよ。
なかなか出られなくて最初は不在着信になってても気にしてなかったんだけど、その話を他の奴にしたら都市伝説とかいう話を聞かされちまってさ……」

ふむふむと頷きながら、電話の向こうの真弘の話を真剣に聞いていた珠紀だったが、次第に何か変だなぁと感じ始めた。
そして、その都市伝説とやらが「公衆電話から掛かってくる着信で、それに出てしまったら、どこかに連れて行かれてしまう」という話だと分かった時点で、思い当たることがあるとはっきりと気付いてしまった。

まだ携帯電話を持っていない珠紀の連絡手段は主に家の電話で、真弘に掛ける場合は登録してあるため、すぐに自分からの着信だと真弘に分かってしまう。
だが、家の電話には掛かってきた番号が表示される機能などもちろん付いていないため、真弘からの着信だと気付かずにそのまま何も心構えなく出てしまって驚いてしまうが常だ。
そして、どうにもそのことで自分ばっかりドキドキしてしまっている状況が悔しくて、どうにかして真弘を驚かせることができないかと考えた結果、公衆電話からの発信に行き着いたのだった……。
それから実際に何度か実践してみたものの、まさか、それがこんなことになっているとは思ってもみなかったのである。

あはは…と呆れて乾いた笑いを浮かべながら、がっくりと肩を落とす珠紀。
しかし、電話越しのためそんな彼女の様子に全く気付かないまま、恐怖の電話の怖さを語り続ける真弘。

「それでよ、実際に電話に出た奴は流れてくる笑い声を耳にした瞬間、跡形もなく消えてしまったって話なんだとよ!
怖いと思うだろ!なぁ、珠紀!お前も気を付けろよっ」

「あはは……、怖いですねー」


半ば適当に受け答えをしながら、もう公衆電話から掛けるのはやめようと思う珠紀だった…。


完 拍手お礼展示期間:2007.10.08〜2008.01.19


あとがき

緋色真珠SS「月を見上げて」の文章中から派生したネタです(笑)
怖い話かと思いきや、その原因が自分だったと気づいてしまう珠紀と、それを知らずに怖がる真弘先輩が書きたかったという。
でも、定期的にあった着信がぴたりと止むこともある種怖いような気も……。

それでは読んでくださった方、ありがとうございました。